「20年来愛用のいすが、がたつくようになったので。」と、6脚分のいすの分解と再組立てを頼まれました。
「ノックダウン」といわれる、ねじも金具も使わなで ハンマーで叩きこむタイプのつくりです。接着剤が古くなっていてぐらぐらの箇所がある一方、まだしっかりくっついている箇所もあります。微妙な力加減を要求され、 修理や分解はむずかしい タイプのいすです。
「ひょっとしたら、6脚のうち なかには、うまくできないものも、あるかもしれませんよ。」と、お断りしたうえで、おひきうけしました。
さて、結果としては、2脚の座面の裏側に 小さなひび割れが生じました。補強材を使って、じゅうぶんな修理を施して、お渡ししましたが、うまくできなくて残念、わるかったなあ という気持ちでした。
ただ、僕としては、「どのいすも同じように、十分慎重におこなったのに、なぜこの2脚だけが…」という疑問が残りました。正直、いささか自信もなくしました。
ところが、聞いてみると、この2脚のいすは、水泳好きの奥さんが、毎日腹ばいになって バタフライの練習に使っていたものだとわかりました。
「ああそれで、不自然な力が、いつも同じ部分にかかっていて、もろくなっていたんですね~。」
お客さんも僕も、大いに笑いました。そして、僕は ほっと 胸をなでおろしました。
みなさん、どうぞそういうことは、先に知らせておいてくださいね。おねがいですから。
それはそうと、二羽のフクロウのようなものは、なんでしょう?
答えは、こがらな奥さん用の椅子の脚を、カットした時の先っぽです。
遊びはんぶんで、ふくろうの絵をかいてお渡ししたら、おもしろがって飾ってくださったのです。